「茶のしずく石鹸による小麦アレルギー事件」からの教訓
2011年に発覚した「茶のしずく石鹸による小麦アレルギー」は、2.000人以上の人が食物アレルギーを発症し、顔や目の回りのかぶれといった皮膚障害のほか、全身のかゆみやアナフィラキシーショック、呼吸困難など重篤例が多く含まれていた大事件でした。
元宝塚の女優などを起用した大量宣伝によって、「30g・1,050円 / 60g・1,980円 / 110g・3,500円 」という高価な石けんが5年半の間に延べ467万人に約4700万個販売されたといわれますが、販売元の「悠香」は「日本一愛される会社」をスローガンに創業からわずか8年で300億超もの売上高を誇る企業へと急成長しました。
しかしながら、その影に企業に欠かせない品質保証をおざなりにし、マーケティングの費用対効果や収益性を追う企業体質がありました。
石けんに保湿剤として配合された「グルパール19S」という他の原料メーカーでは扱われていないような高分子のタンパク加水分解物が経皮的に感作し、小麦を含む食品を摂取した際に食物アレルギーの症状が誘発されるようになったのです。
食物アレルギーを誘発したこの事件は、これまで有力だった「食物アレルギーは、食べることで感作が起き、発症する」との説が改められることになりました。
健康な皮膚は表皮の角質層が、外界からの刺激や異物(アレルギーの原因物質や細菌・ウイルス)の侵入を防ぐ役割(バリア機能)が働いていますが、湿疹や小さな傷があったりすると、かなり大きな分子量のものも通過させてしまうことになります。
「茶のしずく石けん事件」によって皮膚を介してアレルゲンが侵入する経皮感作が注目され、食物アレルギーは経口摂取によって生じるのではなく、皮膚のバリアが壊れているおかげで、この赤いラインのようにアレルギー物質が皮膚を通じて入ってくる、アレルギー発症には皮膚が大きな役割を果たしていることがわかり、その後以下のような研究が進められています。
2014年6月、兵庫医科大学(兵庫県西宮市)の吉本智弘教授らのチームがマウスを使った実験で解明しました。
界面活性剤(SDS・ラウリル硫酸ナトリウム)を塗り皮膚を弱い状態にしたマウスに、卵白に含まれるアレルギー原因物質の卵白アルブミンを塗り続けた。するとマウスはアレルギー体質になり、その後卵白アルブミンを口から投与すると、アレルギー症状を起こした。
2018年「環境因子とアレルギー疾患(バリア・免疫・神経)
順天堂大学 大学院医学研究科アトピー疾患研究センター
ハウスダストや花粉などが皮膚のバリア組織から侵入によって感作が始まる発症の解明によってアレルギーの新しい治療・診断・予防法につながる可能性を追求しています。

化粧品と食物アレルギー
加水分解小麦以外にも、カルミン(コチニールカイガラムシから抽出される色素成分を加工したもの)、トウモロコシ、大豆、カラスムギなどの成分を含有した化粧品にも食物アレルギーの発症事例が報告されています。
また、経皮感作による食物アレルギーの発症によって、食物由来成分を配合した化粧品の危険性が注目されています。
経皮経粘膜感作が強い疫学的インパクトをもつ成人食物アレルギーの特徴を考えると、近年の天然素材ブームによる天然物由来成分の化粧品・ヘアケア商品への添加が、特に女性の食物アレルギーの流行(有病率の増加)に関与している可能性も危惧され、今後もこのような病態に関しては十分な注意を払う必要がある。
総合医学会報告「化粧品添加物による食物アレルギー」85-8.pdf (iryogakkai.jp)